学校における金融教育

金融教育の現在

 学校教育の現場では、新学習指導要領に基づいて、本格的に金融経済教育の授業が始まることになりました。すでに中学校では2021年度から金融リテラシーを高める授業が盛り込まれていますが、高校でも22年度入学の生徒から新科目「公共」で、基礎的な金融経済の仕組みについての授業が行われ、「家庭科」の授業では投資信託などの金融商品や資産形成の視点にも触れた授業が本格的にスタートします。
 今回は、小学校から高校までの各段階において、どのような指導が行われているか、見てみることにします。

小中高における学習内容

 小学校の金融教育で目指すのは、おこづかいやお年玉、買い物やお手伝いなどを通してお金にかかわる経験や知識、社会で生きていく力の素地の習得です。お金や金融の働きについて、小学校の低学年・中学年・高学年とさらに年齢層別に習得すべき目標が掲げられています。(以下、金融庁「学校における金融教育の年齢層別目標」による)

(低学年)
・ものやサービスを手に入れる時にお金を払う必要があることを理解する
・硬貨と紙幣の違いに気付き、理解する

(中学年)
・貯金したお金を将来使えると理解する
・銀行へお金を預ける際に利息がつくことを理解する

(高学年)
・暮らしを通じてお金のさまざまな働きについて理解する
・預金や貸出を含む、銀行の基本的機能について理解する

 中学校の金融教育では、生活設計についての理解や将来の自立に向けた基本的能力の育成を目指しています。特に社会科の公民分野を通して目指すのが下記の項目の習得です。
・お金の役割を理解する
・金融機関の種類およびその機能について理解する
・中央銀行の機能について理解する
・各種カードの種類や仕組み、機能について理解する

 高等学校の金融教育で目指すのは、生活設計の重要性や社会的責任について理解し、一社会人として自立するための基礎能力を養うことです。年齢層別目標では、公民・家庭・商業の授業を通して下記項目の習得を目指すと記載されています。
・電子マネーや地域通貨等について理解する
・決済機能の多様化について理解する
・間接金融や直接金融の意義を含め、金融の仕組みと働きを理解する
・金利の機能と変動の理由について理解する

今後の課題

 これまでの金融教育では、どのような効果が得られたのでしょうか。また、どのような問題点があったのでしょうか。
 金融経済教育を推進する研究会による、2014年4月の全国の中学校・高等学校の教員4462人を対象とした「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」によると、約4割の教員が「金融教育に関する教科書の記述が不十分(またはやや不十分)」と回答しています。ちなみに、特に不十分な内容として「クレジット、ローン、証券など」が多く指摘されました。
 この調査結果について、識者は「2014年のデータではありますが、現在も状況はそこまで大きく変化していないと捉えています。また、同調査で約7割の教員が金融教育を行っているまたは行ったことがあると回答しているのですが、実際に行った時間数は、中学1・2年生で『0時間』、中学3年生から高校3年生で『1~5時間程度』がもっとも多かったのです。教師によっても感覚に差があり、継続的な取り組みができていないという課題が見えました」
 一方で、9割以上の教員が「金融教育は必要である」と回答しました。必要性は感じながらも、教材や時間が不足しているため、金融教育まで手が回らないという現実があるといえそうです。今後、金融教育がどのように変わっていくのか、注目したいところです。